神奈川県横浜市の公認会計士・税理士

ブログblog

青色申告と白色申告とは?違い5つとメリット・デメリットを徹底解説

Pocket

個人事業主の方は毎年、確定申告をして納める税金を税務署に報告して、納税する義務があり、申告方法は、青色申告と白色申告の2つの方法があります。

青色申告は事前の届けなど負担が大きく、面倒な手続きもありますが、その反面、税金の面でメリットがある申告方法です。一方で、白色申告は記帳の手間は青色申告より楽ですが、税金の面でのメリットはありません。

ここでは、青色申告と白色申告の違い、メリット・デメリットを徹底的に解説します。

青色申告とは?

青色申告の概要は以下のようになります。
1年間に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額 や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、また、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。

決められた方法で記帳を行い、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度があります。青色申告をすることができる人は、 不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。

参照元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2070.htm

白色申告とは?

青色申告を行わない申告者のことを白色申告者といいます。
年収が300万円を超えない白色申告者は、記帳や帳簿保管の義務がないなど、簡易的に手続きができるメリットがありました。しかし、平成26年1月より制度が変更になり、事業所得、不動産や山林取得のある白色申告を行う全ての人が、帳簿等書類を保管しなければならなくなったので、注意が必要となります。

青色申告と白色申告の違い5つ

青色申告と白色申告の違いは以下の5つになります。
・帳簿記入の方法
・事前の届け出
・書類の作成
・専従者給与
・純損失の繰越控除

それぞれの具体的な内容について、確認してみましょう。

①帳簿記入の方法

青色申告も白色申告も、帳簿付けが必要ですが、白色申告は簡単な「単式簿記」で行います。青色申告はやや複雑な「複式簿記」ですが、控除額が最大65万円と大きく、節税効果が期待できます。

ただし、青色申告も「単式簿記」を選択することが可能で、その場合の控除額は10万円となります。

②事前の届け出

青色申告を行うためには事前に「開業届」と「青色申告承認申請書」を、税務署に提出する必要があります。白色申告は届け出を提出する必要がなく、届け出を提出しない場合は自動的に白色申告になります。なお、青色申告を行うためには期限もあるため注意が必要です。

③書類の作成

確定申告の際、青色申告をする場合は「青色申告決算書」、白色申告をする場合は「収支内訳書」を作る必要があります。この青色申告決算書もしくは収支内訳書は、確定申告書と一緒に税務署に提出する必要があります。

④専従者給与

専従者給与とは、生計を一にする(生活費が同じ家計から支払われているなど)配偶者や親族が、納税者の行う事業を手伝っている場合に、一定の条件のもと、支払った給与を必要経費として差し引くことができる制度です。

青色申告をする場合は、事前に届出をすることで給与の全額を経費にすることができ、白色申告をする場合は、専従者1人あたり50万円(配偶者は86万円)が限度となります。

⑤純損失の繰越控除

純損失の繰越控除とは、赤字分を全所得から差し引いても残額がある場合、その損失額を翌年から3年間、繰り越して控除できる制度です。青色申告の場合は、繰り越した金額は、利益の出た年の所得金額と全額相殺できますが、白色申告の場合は、変動所得や被災事業用資産の損失に限り、繰越控除が可能となります。

青色申告のメリット8つ

青色申告のメリットは以下のようになります。

①青色申告の特別控除を受けることができる

青色申告では、最高65万円の特別控除を受けられます。青色申告で65万円控除を受けるためには、 複式簿記で帳簿づけを行い、作成した帳簿を一定期間保管しておく事が必要です。(青色申告でも複式簿記ではなく簡易簿記の帳簿付けは可能です。しかし、その場合は青色申告の最大のメリットとも言える「65万円の特別控除」は受けられませんが、10万円の控除と、その他青色申告特有の控除は受けられます。)

②赤字を3年間繰り越して収入と相殺できる

青色申告で事業を開始した1年目は赤字が200万円あった場合、2年目に黒字で200万円が出た場合、2年目の事業所得を0円として計上でき、所得税の課税はなしになります。

③貸倒引当金を利用できる

青色申告で売掛金が回収できなくなった場合を予想して、回収していない売掛金の一部を費用として計上でき、所得税の課税を少なくできます。

④少額減価償却資産を一括で費用計上できる

備品や建物の購入などに使った経費は10万円以上になると原則として一括費用計上ができませんが、青色申告を選択している場合は30万円未満のもの経費であれば、年間で300万円まで一括で費用として計上することができます。

⑤家族従業員の給料を経費にできる

青色申告では、家族を従業員にしている場合、専従者給与を経費として計上でき、課税対象額から差し引くことができるため、所得税上、大きな節税効果があります。ただし、事業者と生計を一にしていて、年齢が15歳以上という条件があり、支払える給料は「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した範囲までなので、注意が必要です。配偶者控除を受けられなくなるなどデメリットもありますので十分お気を付けください。

⑥家事按分を利用できる

青色申告では自宅をオフィスにしている場合は、家賃や光熱費も経費として計上できます。ただし、すべての金額を計上できるわけではなく、事業用に使用しているスペースや割合のみなので、注意が必要です。

⑦現金主義を利用できる

通常、売り上げや必要経費を記帳する際は、取引きが「発生」したタイミングで記録する「発生主義」という方法を採用しなければなりません。これに対して、実際に現金の入出金があったタイミングで記帳する方法を「現金主義」と呼びます。

仕入れのためにクレジットカードで商品を購入した場合、「商品購入時」と「カード利用代金の引落時」の両方を記録するのが発生主義で、「カード利用代金の引落時」のみを記録するのが現金主義になります。

青色申告の場合、前々年分の不動産所得と事業所得の合計金額が300万円以下であれば、現金主義による方法で記帳することが認められています。ただし、その場合、青色申告特別控除の金額は10万円となります。

⑧低価法を利用できる

原則、棚卸資産を評価する際は、原価法という商品購入時の価格で行う必要があります。青色申告の場合は、「原価法で行った評価」と「期末時点の在庫の時価」のいずれか低い価格で評価を行う「低価法」という方法を選択することができるため、評価損を計上することができます。

青色申告のデメリット

青色申告を行うには、青色申告承認申請書を提出する必要があり、手続きが面倒なのがデメリットです。手順は以下のようになります。

ステップ①:青色申告承認申請書の提出

青色申告を行う前には、青色申告承認申請書を提出して、税務署に届け出る必要があります。青色申告承認申請書とは、青色申告を受ける場合に、最初に提出すべき書類です。

<青色申告承認申請書の提出期限>
青色申告承認申請書の提出期限は、青色申告をしたい年の3月15日までになっています。ただし、その年1月16日以後新たに業務を開始した場合は、その業務を開始した日から2か月以内になります。

ステップ②:損益計算書と貸借対照表の作成

青色申告を行うには、損益計算書と貸借対照表を作成する必要があり、この作成も手間がかかり、デメリットであるといえます。

<損益計算書の作成>
損益計算書の1ページ目には、売上と売上原価、経費、各種引当金等、青色申告特別控除額、2ページ目には、月別売上(収入)金額及び仕入金額、給料賃金の内訳及び専従者給与の内訳貸倒引当金繰入額の計算、青色申告特別控除額の計算、3ページ目には、減価償却費の計算、利子割引料、地代家賃、税理士・弁護士等の報酬を記入します。

<貸借対照表の作成>
貸借対照表(決算書4ページ目)には、資産の部、負債・資本の部、製造原価の計算に区分して、具体的な内容を記入します。

白色申告のメリット3つ

①記帳の方法が比較的、簡単にすむ

所得税法上、白色申告と青色申告のいずれを選択しているかに関わらず、日々の売り上げや必要経費などの記帳は必要です。しかし、白色申告であれば一部の金額をまとめて記載するなどの「簡易な方法」による記帳が認められています。青色申告で必要とされる「複式簿記」と比べると、記帳する手間を少しは省くことができるでしょう。

②事前に承認を得る必要がない

白色申告は税務署から事前に承認を得る必要もないため、青色申告と比べて手続きが簡単です。このように、白色申告は青色申告よりは手軽だということが唯一のメリットといえるでしょう。

③収支内訳書の作成は手間が少ない

一年間の記帳した結果の白色申告の提出書類である収支内訳書は、青色申告提出書類の青色申告決算書と比べると多少手間が少ないです。なぜなら、収支内訳書には貸借対照表(資産、負債、資本)のページがないことがあげられます。白色申告では1年の売上と費用と利益だけを計算すればよく、過去からの事業の累積の数字、つまり資産や負債や資本がいくらあるかを計算する必要はありません。

そもそも、単式簿記は基本的に現預金の出入りを記帳するものであるため、例えば固定資産の減価償却を表現することができません。一方複式簿記はルールに従って仕訳を作成するだけで年度末に自動的に貸借対照表が作成されます。

白色申告のデメリット4つ

①青色申告の特典を受けられない

白色申告のデメリットは、節税効果の高い「青色申告の特典」を受けられないということです。青色申告では、簡易簿記では10万円、複式簿記ならば65万円の控除が受けられます。

②赤字を3年間繰り越すことができない

青色申告をすると赤字を3年間繰り越すことができます。特に、事業を始めたばかりでしばらく赤字が続くような個人事業主にとってはお得な制度です。白色申告では赤字を繰り越すことができません。1年目に赤字1000万円、2年目に黒字500万円であれば青色申告の場合は2年目も所得税がかかりませんが、白色申告の場合は500万円の利益に対する所得税が発生します。

③専従者がいる場合の節税効果が低い

専従者に給与を支払う場合、青色申告は支払った給与を全額個人事業の経費にできる一方、白色申告では固定額しか経費計上できません。

④経費計上できる上限が低い

白色申告の場合は10万円以上のものを購入した場合は固定資産として計上し、複数年に分けて減価償却として費用処理が必要になりますが、青色申告の場合は「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」という制度により、30万円未満まで一括費用経費計上が認められます。

どちらがお得?青色申告と白色申告の選択基準

青色申告と白色申告のどちらで申告するほうがお得なのでしょうか。税制上のメリットをとるには、青色申告を選択するべきでしょう。しかし、青色申告の場合は、事前の「申請書の提出」と「帳簿付け」、「決算書の提出」が必要となります。

白色申告から青色申告への変更

白色申告から青色申告に変更しようと検討している人は、管轄する税務署に「青色申告承認申請書」を出す必要があります。また、青色申告をするための帳簿なども記帳していくことが必要です。こうした手続きや準備についても、あらかじめ確認をしておきましょう。その段階で、自分の事業の規模や状況と照らし合わせ、どの方法で申告するのが適切なのかの判断をすることが大切です。

会計ソフトの利用

青色申告での記帳は、会計ソフトなどを使えば簡単です。会計ソフトを利用すれば、日々の支出と収入を入力するだけで、その取引を複式簿記の形にしてくれるので、簿記のルールを知らなくでも対応することができます。青色申告決算書も、帳簿へ正確に記入してあれば、自動で作成することができます。会計ソフトへの入力後は、印刷して税務署に提出するだけで、作業完了です。

まとめ

平成26年から、記帳と帳簿の保管制度が変更となったため、白色申告にし続けている人にとっては、青色申告への切り替えのタイミングであるといえます。なぜなら、青色申告でも白色申告でも記帳を行う必要があり、青色申告を行うことで税金上の様々なメリットを得ることができるからです。

よって、これを機会に青色申告に変更して、所得税を節税する対策を講じたほうがよいでしょう。

この記事をシェアする

Pocket