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青色申告の領収書とレシートの取扱いと保管方法

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個人事業主が青色申告を行う場合の領収書レシートの取扱いと保管方法はどうすればよいのでしょうか。領収書の宛名の有無、書きかた、領収書がない場合の扱いについて解説します。また、領収書の保管期間や保存方法についても確認します。

青色申告で領収書の提出は必要?

青色申告で領収書の提出は必要ありません。青色申告の場合には「確定申告書B」と「青色申告決算書」を提出します。ただし、必要に応じてその他の申告書類を提出する場合があります。

また、領収書や納品書、銀行通帳などの書類、作成した帳簿は提出しません。これらの書類は、後に税務調査などが入る場合に備えて保存しておくものです。そして、確定申告の時に提出はしませんが、確定申告が終わっても保存しておく必要があります。

青色申告の領収書の保存と税務調査

青色申告の場合は、帳簿、決算関係書類、取引関係書類は7年間、その他の見積書、注文書などは5年間、 保存しておく義務があります。税務調査については、個人事業主が提出した確定申告書類を税務署員がチェックし、事業の売上高や必要経費のバランスを見て疑問をもった場合などに連絡がきます。儲かっている事業主が優先的に税務調査の対象となることが多いですが、青色申告の対象者は全般的に対象となりやすいです。

領収書が認められる要件と宛名の書き方

「上様」という書き方は認められる?

領収書の宛名に「上様」と記入してもらう慣習がありますが、税法上宛名を記入する欄のない機械発行によるレシートであったとしても領収書として認めてもらえることから、「上様」と記入するのは間違いではないです。

しかし、宛名が「上様」としてある領収書を当事者以外の第三者が確認したときに金銭授受の具体的なやり取りが判読できません。よって、信憑性の高い書類とは言い切ることができないので、避けたほうがよいでしょう。

宛名なしの領収書は認められる?

宛名が空欄であったり、領収書の作成を依頼する際に宛名を「上様」と記入してもらっている領収書を宛名なしの領収書といいます。宛名なしの領収書は、業務と支払い内容に関連性があるかどうかで、経費として認めるかを判断します。
よって、経理上は宛名がない領収書であっても特に問題はないとされています。しかし、会社の規定によって、宛名なしの領収書やレシートが経費として認められないケースもあるので、注意が必要です。

宛名なしの領収書の扱い

経理上は認められる領収書であっても、税務調査の際に認められるかどうかは別問題となります。税務調査の場合は、疑問が生じる余地があると細かく追及される可能性があるので、できる限り領収書には宛名があることが望ましいでしょう。

また、宛名なしの領収書を紛失した場合、宛名がないため、拾った人が自身のものとして領収書を使うことも考えられます。領収書が悪用されないように、宛名を記載してもらうほうがよいでしょう。また、宛名が空欄の場合に受取人が自分で記入することは文書偽造にあたり、認められません。

領収書に宛名を正しく書いてもらうための注意点

領収書は支払いの証明となる書類ですが、宛名がないと領収書の発行側がだれから支払いを受けたのかを特定できないため、二重に請求される場合もあります。したがって、正しい宛名を書いてもらった方が望ましいといえます。

しかし、領収書の作成をお願いして、発行側が勝手に上様宛の領収書を書いていたといったこともあるでしょう。この場合は、領収書の作成を依頼する際には、会社名や個人名などを記入したメモを渡す、名刺を見せるなどの工夫をし、記入してほしい宛名を作成者に伝えるとよいでしょう。領収書に宛名がないことで、さまざまなデメリットが発生する可能性があるため、領収書を受け取る際には、宛名が正確に記載されているかを確認するべきでしょう。

領収書がない場合は経費に入る?レシートの取扱いは?

領収書の発行が難しく、下記のような場合、経費でも領収書が発行されません。
・電車やバスに乗るときに支払う運賃
・得意先訪問前に情報をチェックするため駅の売店で買った新聞や雑誌
・関係先のご祝いやご不幸での、ご祝儀や香典

また、発行してもらった領収書を紛失してしまった場合、領収書なしやレシートなしの状態での出費を経費にするためには、出金伝票を発行しておくとよいでしょう。

領収書がなく、レシートしかない場合でも経費として認められますので、その場合はレシートを保管しておきましょう。

出金伝票の発行

出金伝票は、会計処理をした後も、税務書類と一緒に資料として保存する必要があります。交通費は業務日報で、一緒に保存するようにします。また、案内状やビジネス・セミナーの入場チケットなども、それだけでは証拠書類になりにくいですが、出金伝票と一緒に保存すれば、有効な証拠書類になります。

現金出納帳と出金伝票の併用

領収書やレシートの受け取りができなかったというのは、現金で支払っているケースが多いのではないでしょうか。現金での支払いであれば、出金伝票以外に現金出納帳への記帳を行うとよいでしょう。

現金出納帳は現金の出金・入金が時系列に記載されているので、適正な会計処理のなかで出金伝票が起こされていたことを示す証拠になります。出金伝票と現金出納帳を組み合わせれば、領収書やレシートに引けを取らない証憑書類になります。

現金以外の電子決済などでの支払い

電子決済などの領収書なしのキャッシュレス支払いはひと手間かける必要があります。

<ICカード乗車券など>
JR東日本の「モバイルSuica」では、定期券や新幹線の乗車券・グリーン券・特急券をキャッシュレスで購入でき、手間も時間も少なくて済みます。領収書の発行がないこのサービスを経費にするには、パソコンで利用明細(領収書)を印刷して出金伝票に添付する方法があります。

<ETC利用料金>
ETCを利用した際には、後日クレジット会社から送付されてくる請求書に利用明細が添付され、領収書の代わりになりますが、タイムラグがあるので不便です。このような場合、インターネットの「ETC利用照会サービス」では過去2ヶ月間の利用証明書を発行することができるので、活用するとよいでしょう。

青色申告の領収書の保管義務と保管期間

青色申告の領収書の保管義務と保管期間について、消費税法上の扱いと白色申告での扱いと比較しながら、確認してみましょう。

そもそも領収書とは?

領収書とは、サービスや商品の代金を受け取る際に発行する書類で、証憑(しょうひょう)書類と呼ばれており、金銭の受け渡しの証明となります。証憑書類は、保存期間が決められているため、勝手な判断で処分することはできず、保管義務があります。

保存期間は法人と個人事業主とでは異なり、消費税の仕入れ税額控除の適用を受けている場合は保存期間に注意する必要があります。ここでは、個人事業主の場合について、確認します。

個人事業主における領収書の保存期間

個人事業主における領収書の保存期間は所得税法で定められていますが、期間が白色・青色申告で異なるため、それぞれの場合に分けて解説します。

白色、青色どちらの場合においても保存期間の起算点は、確定申告の期限日であり、領収書の発行日ではないので、注意が必要です。

白色申告の場合

白色申告の場合における領収書の保存期間は5年です。2014年1月以降は、今まで保存義務のなかった「事業所得が300万円以下の場合」であっても、保存することが義務付けられました。そのため、白色申告対象者は、所得に関わらず領収書を5年間保存しなければなりません。なお、法律で定められている保存期限は5年間ですが、他の帳簿は7年間の保存が義務付けられているため、可能であれば領収書であっても7年間保存したほうがよいでしょう。

青色申告の場合

青色申告の場合、領収書は「現金預金取引等関係書類」に属し、その保存期間は7年間になります。ただし、例外として、前々年の所得が300万円以下の場合は、5年間とされています。

消費税の仕入れ税額控除を受けている場合

消費税の仕入れ税額控除とは、仕入れや流通の段階で消費税を何重にも課税されるのを防ぐための制度で、仕入れにかかった消費税を、支払うべき消費税から控除することができます。この消費税の仕入れ税額控除の適用を受けている場合は、消費税法で仕入れに関する領収書の7年間の保存が義務付けられています。

領収書の保存期間における注意点

白色申告や一部の青色申告者は、所得税法で領収書の保存期間が5年間となっています。保存期間が長い法律が優先され、消費税の仕入れ税額控除の適用を受ける場合には、7年間にわたり帳簿と請求書や領収書などの保存義務があります。

請求書や領収書がないと、消費税の仕入れ税額控除が受けられない場合があり、消費税の負担が増えるので、注意が必要です。

なお、領収書の金額が30,000円未満の場合や、やむを得ず請求書を受領できなかった場合には保存義務は生じません。

領収書の保管方法

領収書の保管時には、プライベートのものと事業用のものに分けて保管することが必要です。プライベートのものは経費とならないので、注意が必要です。また、領収書の保存方法は、原則は紙で保存することが求められていますが、電子取引であっても、紙に印刷して保存する必要があります。

しかし、最近では電子化、クラウド化の流れに従って税務証憑も電子(PDF)での保存が可能となっています。この場合、事前に税務署長の承認を得て適切な手続きを行なえば電子データでの保存が可能になります。紙以外の媒体で保存を希望する場合は、電子保存を検討しましょう。

書類の電子保存(PDF保存)

平成27年の税制改正により書類をスキャナ保存することが可能になりました。書類の保管コストは費用がかかりますので電子帳簿(PDF)で保存すればコストの削減につながります。改正されたスキャナ保存の概要とはどのようなものなのでしょうか。

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存とは

領収書、請求書、見積書などの国税関係書類についてスキャナで保存することです。書類内容を税務署の承認を受けた場合に保存が認められています。今回要件が緩和されたことにより、利用がしやすいものになりました。

書類の対象が広がる

契約書、領収書、請求書のすべてが対象になります。今までは3万円未満というのが条件でしたが、これが廃止されました。注意事項として相互けん制、定期的なチェックや再発防止策の整備が必要です。

これまでは、いわゆる専用スキャナ「原稿台と一体となったもの」で作成した画像しか、スキャナ保存としての要件を満たしませんでしたが、平成28年の改正で、スマートフォンで撮影した画像を保存した場合でも、スキャナ保存としての要件を満たすこととなり、一層領収書の電子保存が楽になりました。

電子帳簿保存に関しては法律が毎年改正され個人でフォローしていくのは難しい状況ですので、法改正に対応したクラウドサービスを利用するのがおススメだと思います。

まとめ

青色申告で領収書の提出は必要ありません。しかし、後に税務調査などが入る場合に備えて保存しておく必要があります。また、領収書として認めてもらう要件を満たしている必要があります。認められない場合、経費と認められなくなるからです。そして、決められた保管方法で保管し、保存期間も決められているので注意が必要です。

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