神奈川県横浜市の公認会計士・税理士

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2017.12.29.

仮想通貨(ビットコイン)の確定申告を専門家が徹底解説!必要書類・申告方法

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ビットコインの上昇のニュースが世間を騒がせていますね。
2014年にマウントゴックス社が経営破綻した際は、1ビットコイン=5万円程度だったのですが、現在は1ビットコインが200万円を超えるなど、仮想通貨バブルの値動きを見せています。

先日、堀江貴文さんこと、ホリエモンのトークセミナーを聞きに行ったのですが、彼はイーサリアム、ビットコインなどの仮想通貨(ビットコイン以外の仮想通貨はアルトコインとも言う)が、日本で話題になる前から興味を持っており、自身のブログやメディアなどでたびたび紹介していたようです。

彼自身いくつかの仮想通貨を保有しているそうですが、そのすべてをきちんと確定申告で報告しているとの事でした。

日本では、3億円以上の不動産を保有していたり、1億円以上の有価証券や投資信託を保有する人は「財産債務調書」と呼ばれる保有している財産を、申告しなければいけない制度があるのですが、ホリエモンの場合、銀行預金や株式以外にも、仮想通貨を財産として報告しているそうです。

彼の場合は、証券取引法違反で逮捕歴がありますし、社会的な影響力が大きいでしょうから、2度とやましい事はしないというスタンスなのでしょうね。

法律を規定する段階では、仮想通貨の財産報告は予定されていなかったでしょうけど、おそらく仮想通貨も「財産債務調書」に記載する必要があると思われます。

仮想通貨(ビットコイン)の確定申告は必要?

日本国内で生活している人が仮想通貨で利益を得た場合は、そのすべてが日本で確定申告の対象になります。仮想通貨の取引所が海外にあったとしても、そこで得た利益は日本で課税の対象となることに注意する必要があります。

基本的には雑所得と呼ばれる区分に分類されて、税率は利益の金額に応じて最高55%の税率(住民税含む)で税金が課されます。
副業的な話ではなく、プロの仮想通貨トレーダーとして本業で仮想通貨取引をしている方の場合は事業所得という区分で良いという回答が出ています。ただしこの場合も税率は、利益の金額に応じて最高55%の税率(住民税含む)で税金が課されます。

このことは、国税庁がホームページでも周知徹底していますので、仮に申告を行わないで後で調査が来た際に知らなかったといっても済まされません。

ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
[平成29年4月1日現在法令等]
ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。

このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。
(所法27、35、36)

引用先:国税庁タックスアンサーより

確定申告の必要な人・必要ではない人の違い

基本的には仮想通貨(ビットコイン)で利益が得た場合には、確定申告をする必要がありますが、あなたがサラリーマン(1か所から給与の支払を受けている人)で、仮想通貨(ビットコイン)を含む年間の所得の金額の合計が20万円以下の人は、仮想通貨で得た利益について申告する必要がありません。(住民税は20万円以下でも申告が必要です。)

仮想通貨(ビットコイン)については、日本円やUSドルに換金するという以外にも、実際に、電子マネーとしてビックカメラ等でも使用することができます。

電子マネーとして使用し、買い物などに使ってしまったという場合でも、含み益が利益として認識されたと判断され、課税の対象となってくるので注意が必要です。

仮想通貨(ビットコイン)の確定申告における必要書類一覧

仮想通貨を確定申告する際には以下の書類が必要になります。

①仮想通貨取引CSV履歴
②仮想通貨取引以外の所得の明細
(給与所得者であれば勤務先からの源泉徴収票となります)
③医療費控除、寄付金控除(ふるさと納税を含む)、住宅ローン控除など控除証明書
④確定申告書A (税務署でもらう)

確定申告(ビットコイン)の確定申告方法5ステップ

仮想通貨について確定申告をする場合には以下のポイントを注意しながら行っていきましょう。サラリーマンの方で、副収入的に仮想通貨で利益が出た人を想定して記載をしますので、個人事業主だったり、株式トレーダーなど他の所得もある場合にはこれ以外のステップもあることに注意が必要です。

ステップ①:仮想通貨取引の損益を集計する

仮想通貨の取引所では、マイページで年間取引報告書を、CSVもしくはHTMLのような形でデータを集計できるような形になっていることがほとんどだと思います。こちらの計算対象期間を2017年1月1日から2017年12月31日までと指定して、データを抽出(エクスポート)します。ただし、仮想通貨で厄介なのは損益の計算方法が良く分からないという事なのです。

それは、株やFXの場合には、基本的に1つの取引所の中で売買が完結しますが、仮想通貨の場合には複数の取引所、ウォレットなどに移管することがあり得るからです。また、一部の取引所では「取引報告書」や「取引履歴」を確認できない場合があると言います。

そのため、仮想通貨を買った時、他の仮想通貨へ変換した時、仮想通貨で物を買った時などのタイミングでの損益を、都度 自分で計算して把握しておく必要があるということです。

これは実際にやってみるとわかりますが、大量の売買で都度損益を計算していくのはかなり大変な作業なんですね。

ステップ②:複数の仮想通貨を取引している場合の損益の合算

あなたがビットコインだけではなくイーサリアムなど他の仮想通貨の取引も行っている場合には、すべての仮想通貨についてデータを抽出して利益を確認していきましょう。

複数の仮想通貨取引をしている方で、例えば利益の出た通貨と損失の出た通貨の両方がある場合には損益を相殺することが可能となります。

ステップ③:雑所得金額の集計

仮想通貨の利益については「雑所得」として計算しますが、その雑所得の「仮想通貨で得た1年間の利益から必要経費を差し引いたもの」が対象となります。

雑所得=1年間の利益ー経費

ステップ④:給与所得(源泉徴収票)の確認

勤務している会社から、12月の給与支払いの際(1月の場合もある)に源泉徴収票を受け取っていると思います。
この源泉徴収票には、1年間の給料の合計だけではなく、支払った所得税の金額、保険料や年金の金額、生命保険料など重要な情報が記載されていて、確定申告の際に必ず必要な書類となります。

この源泉徴収票を確認して、国税庁の確定申告書の作成ページより、必要事項を入力していきましょう。

国税庁「確定申告書作成ページ」
https://www.keisan.nta.go.jp/h28/ta_top.htm#bsctrl

ステップ⑤:確定申告書の作成提出

確定申告書に集計した数字を書いて、確定申告書を仕上げ、税務署へ提出します。

確定申告(ビットコイン)の確定申告で節税は可能?

仮想通貨での取引であってもきちんと準備を行うことで節税することは可能となります。

前述したように、仮想通貨の利益については「雑所得」として計算しますが、雑所得の計算は「仮想通貨で得た1年間の利益から必要経費を差し引いたもの」となります。

極端に言うと、1年間で得た仮想通貨による利益が300万円だったとして、それに対する必要経費が300万円掛かっていたとすると、「仮想通貨の税金は支払わなくて良い」と言う事になります。

仮想通貨の利益がある方は、必要経費を上手に申告することで、場合によっては税金の支払いに大きな差が生まれるので、節税のためにも必要経費の存在を覚えておく必要があります。

必要経費として申告できる可能性があるもの

必要経費として申告できる可能性があるものとして、主に下のようなものが有ります。

・パソコン・スマートフォン購入代金
・セミナー経費
・交通費
・資料代・新聞代
・電話代・プロバイダー費用
・筆記用具
・取引手数料

「そんなものまで必要経費としてみてしまって良いの?」と、思われるものもあるかも知れませんが、「仮想通貨で利益をだすために必要不可欠な費用」であれば必要経費として認定される可能性があります。

■パソコン・スマートフォン購入代金
仮想通貨の取引にはパソコン(場合によってはスマートフォン)は必要不可欠なものになります。ただしパソコンやスマートフォンは仮想通貨の取引以外に娯楽的用途としても使う事ができるものなので、何処まで必要経費として認められるか微妙なところとなります。

■セミナー経費
仮想通貨の取引セミナーや初心者用の講演などを受けるための費用です。
有料セミナー等を受講し、「そのセミナー内容で利益を上げる事ができた」と考える事ができるので、必要経費として認められる可能性があります。

■旅費・交通費
プライベートで使った交通費ではなくて、仮想通貨取引のために必要な交通費ということですので、都内で行われたセミナーへの旅行費や交通費などとなります。

■資料代・新聞代
経済ニュースや各種指標等のデータを入手する時に必要だった情報に関する必要経費です。
例えば、有料会員しか読めないようなメルマガや情報商材、専門書籍代が経費として考えられます。

■電話代・プロバイダー・回線費用

■筆記用具

■取引手数料
取引所で通貨交換をする際に取引手数料などが発生する場合にはこれに当てはまります。
仮想通貨取引は、取引所に一定の手数料を支払う事で取引を成立させていますが、その手数料についても必要経費として申告できます。

必要経費の注意事項

ここまで幾つかの例を紹介しましたが、基本的に「必要経費」に関しては明確なガイドラインと言ったものは有りません。

また、確定申告をする際は領収書や現金支出証明などしっかりと記録を残しておき、いつ・どのような用途で支出した費用なのかを明瞭に記録しておきましょう。年に1度の事なので時間をかけてやっておきたいところです。

確定申告(ビットコイン)の確定申告はしなくてもバレない?

ビットコインは他の取引と違って、脱税しやすい?バレにくいんじゃないか?という見解があります。その辺は正直まだよく整備されていないのでわかりません。

例えば、読者の中には株の売買をされている方もいらっしゃると思います。
野村證券やSBI証券など証券会社から、年明けになると毎年「特定口座年間取引報告書」が送られて来ると思います(場合によってはインターネットのマイページから自分で確認する場合もあります)。

この「特定口座年間取引報告書」については証券会社から税務署に報告がされています。
すなわち株の売買についての情報は、証券会社から税務署に報告する義務があるので、あなたが確定申告に記載しなかったとしても税務署に情報は筒抜けです。

また仮想通貨と似たような取引としてFXがあります。
FXについてもFX会社から、ユーザーの取引損益等を記載した「支払調書」が税務署に提出されています。つまり誰がいくらの利益を上げているのかを税務署は把握しています。

これに対しビットコインは取引所から税務署に、ユーザーの損益を報告する制度はありませんので、仮に利益を申告しなかったとしても、すぐに税務署が脱税を発見する事は難しそうです。

しかし、これについては単純に法整備が追いついていないだけで、すぐに報告義務の法律が整備されるはずです。

現に、FX取引についても最初は報告義務がありませんでしたが、後に法整備が行われたという事がありました。

ということは、少なくとも今年については、税務署は仮想通貨取引の利益を把握できないことになりますね。だからといって、悪いことを考えるのはやめましょう。

税務署からの調査っていつ来るの?

税務署からの問い合わせは、通常確定申告した年の秋~冬頃にあります。
ドラマなどでのイメージのように、いきなり税務署の方が自宅に来るという事はまずありません。

通常は「税務署からのお尋ね」という形で、書面での調査が一般的です。税務署からお手紙が送られてきます。

通称「お尋ね」は任意調査という形ですので回答は必ずしも必須ではありませんが、万が一お尋ねがきてしまった場合は、早急に対応された方が良いです。

税務署は、金融機関や証券会社、あなたの資産状況などを把握しているので、もし任意回答をしなかった場合には、電話での問い合わせになったり場合によってはあなたの自宅に訪問されるなどもっと悪い展開になる可能性があります。

お尋ねや調査が来てしまった方から、税理士に相談が来ることも良くあります。
お客様はとにかく、どうしようと悩まれている、顔面蒼白、パニックになられるなど様々ですが、その多くが税理士が代理人になって、税務署との間に入り、修正申告を適切に行う事により解決できます。

修正申告をするなど適切な対応をすることで被害を最小限に抑えられることもあるので、必ず専門家に相談するようにしてください。

まとめ

仮想通貨(ビットコイン)に関する課税はまだまだ不透明なところあがありますし、実際は2017年の申告の際に初めて問題が露呈されるのではないかと思います。例えば、含み益を抱えたビットコイン(BTC)からリップル(REP)にトレードした場合でも、税金の世界では、そこで含み益が実現したものと考え課税が発生します。当然ですが、税金の納付は仮想通貨で行なう事ができません(日本円)ですので、現金がなくても納付が必要になります。

そうすると仮想通貨で利益を上げた人が納税するために、仮想通貨を一部現金に利確する動きも出てくるのかなと思います。

仮想通貨(ビットコイン)は本来、技術が称賛されるべきだと思いますが、どうしても相場が急騰すると値動きの方に注目が集まってしまいますね。法整備は後追いになるので、税金などバーチャルでの利益に対してリアルの世界でどのように課金していくのかという事は難しい問題になります。

クラウド公認会計士としては、新しい技術と法整備を日々注目していきながら、新鮮な情報を提供していければと思います。

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2007年3月慶應義塾大学経済学部卒業。2007年PwC税理士法人に就職。主にオーナー系上場企業をめぐる会計・税務業務に従事。2012年野村證券会社に出向。オーナー系上場企業のプライベートバンキングサービスに従事。2015年にやまと総合会計事務所を開業。

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